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特別企画 知的財産権 Q&A No.2

会報FROM JJDA 2009年7月号より

<商標登録について>

<Q.質問>
所属する会社が新しいブランドジュエリーを立ち上げることになり、ブランド名を商標登録するようにいわれました。
商標登録とは、どのような制度なのでしょうか?また、ブランドのマークを使ったペンダントを作るのですが、このデザインは意匠登録した方がよいでしょうか?

<A.回答>
1.「商標とは、事業者が自己の取り扱う商品・サービスを他人の商品・サービスと区別するために、その商品・サービスについて使用するマーク(標章といいます)です。標章には、文字(下図の商標登録第4013844号「Dior」)、図形(下図の登録商標第2293485号)、記号、立体的形状などのタイプがあり、さらにこれらが結合したり、色がついているものがあります。

商標については、特許庁に出願し、商標登録を受けることにより商標権が発生し、それを使用する一定の商品(指定商品といいます。例えば、「宝石を使用してなる身飾品」等です。)又は商標を使用する一定のサービス(指定役務といいます。例えば「宝石及びその原石の加工」等です。)について、登録商標の使用をする権利を専有することができます。

商標権者は、第三者が無断で、指定商品又は指定役務と同一の商品又は役務に、自己の登録商標と類似する商標を使用する場合や、指定商品又は指定役務と類似する商品又は役務に、自己の登録商標と類似の商標を使用する場合に、使用差止や損害賠償を請求すること等ができます。商標権は、日本全国に効力が及ぶ権利です(外国には及びませんので、外国で事業を行う場合は、別途外国でも商標権を取得することが必要です。)。
商標権は設定登録の日から10年で存続期間が満了します。ただし、商標は、営業活動によって蓄積された信用を保護するものですから、その商標の使用を続ける限り更新することができ、10年の存続期間を何度でも更新することができます。

2. このように、新しいブランド名やロゴ、図形等について商標登録を受けることにより、指定商品、指定役務とその類似の範囲で、その使用を独占することが出来ます。商標権は、このようにしてそのブランドのジュエリーを他のジュエリーと区別することにより、そのブランドは一定の生産者・提供者によるものであるという「出所表示機能」、そのブランドのジュエリーの品質に対する顧客の信頼を保護する「品質保証機能」、そのブランドの「宣伝広告機能」を果たすのです。
 もっとも、商標権により排除できるのは、ブランド名やロゴ等の標章の使用です。従って、第三者が無断でペンダントを製造販売等した場合には、ペンダントが指定商品か類似する指定商品であり、ペンダントに登録商標と同一乃至類似の標章が付されている場合には、商標権による差止、損害賠償が可能です。
 しかし、ペンダントが独特の形をしており、その形は似ているが、ブランド名は表示していない場合、ロゴ等が類似していない場合(すなわち、標章は類似していない場合)は、商標権によっては保護されません。このような場合には、別途、ペンダントの独特の形状、すなわち「デザイン」について意匠登録を受ける必要があります。

3. 意匠とは、物品(物品の「部分」のみでも可能です)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいいます(意匠法2条1項)。平たく言うと工業デザインです。下は、指輪用玉に関する意匠登録第0726714号の意匠公報の図です。

意匠法は、「新しく」創作した意匠を創作者の権利として保護しています。ですから、折角創作したデザインであっても、公表した後は登録されませんから注意が必要です。商標法が標章の使用を保護するのに対して、意匠法は、美感の面から創作を把握し、これを保護しようとするものです。意匠についても、出願し、設定の登録を受けることにより意匠権が発生し、設定の登録の日から20年、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有できます。

以上


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