特別企画 知的財産権 Q&A No.3
会報FROM JJDA 2009年11月号より
<Q.質問>
実用性をかねたジュエリーのアイテムを考えました。この場合どう登録してよいのか、また付随する問題点も知りたいのですが?
<A.回答>
1. 出願・登録を要しない保護について
(1)出願や登録を経なくても、上記アイテムの形状をデッドコピーされた場合には、製品化してから3年間はデッドコピー品の製造販売の差止、損害賠償の請求が可能です(不正競争防止法2条1項3号)。
しかし、アイデアが一緒でも、形態がデッドコピーでない場合には保護されませんし、製品化してから3年間に限られます(不正競争防止法19条1項5号イ)。また、デッドコピー品を譲り受けた業者・小売店等が、デッドコピー品であることを知らず、そのことに重大な過失がない場合には、これらの者に対して差止、損害賠償を請求することができません(不正競争防止法19条1項5号ロ)。
(2)同様に、出願、登録を経なくとも、商品形態が独特であり、販売個数が多かったり、宣伝広告等により、その商品形態が特定の者・業者のものとして広く認識されている場合には、形態が類似するアイテムの製造販売の差止、損害賠償の請求が可能となります(不正競争防止法2条1項1号)。
しかし、こちらも商品形態が特定の者・業者のものとして広く認識されていなければならず、1品製作かごく少数しか製作しないジュエリーのアイテムの場合には適用が困難です。また、アイデアは保護されません。
(3)さらに、上記アイテムの形態、デザイン等が、思想感情を創作的に表現したものである場合には、著作権法による保護の可能性もあります。
しかし、実用性をかねている場合には、それ自体、独立して鑑賞の対象となるというものでもなく、著作権法にいう著作物ではないとされる可能性が高いと思われます。
2. 出願、登録を要する保護について
(1) 以上のとおり、ジュエリーのアイテムを考え出して製品化しても、そのアイデア、商品形態等を真似されても、不正競争防止法、著作権法の適用を受けられず、保護されない可能性が大です(もっとも、不法行為として損害賠償を請求できる場合もありますが、例外的と考えるべきです)。
そこで、出願し、一定の要件を備えていることにより登録されることにより権利が発生する特許出願、実用新案登録出願、意匠登録出願をすることが考えられます。意匠登録出願については、既に検討しましたから(7月号)、ここでは特許と実用新案について検討することにします。
(2) 特許と実用新案との異同
特許法も実用新案法も、アイデアを保護する点では同じです。ただ、特許法は、「物」と「方法」と「物を製造する方法」の3つのカテゴリーの発明(アイデア)を保護するのに対して、実用新案法では、「物品の形状、構造又は組合せに係る考案」を保護するので、物品しか保護されません。また、権利の存続期間についても、特許権は出願から20年で満了するのに対して、実用新案権は出願から10年で満了してしまいます。
しかし、特許権については、特許庁で新規性・進歩性の審査を経るため、出願から登録までに2年程度の期間を要するのに対して、実用新案権については、無審査で登録されるので、出願から3~6ヶ月程度で登録されます。もっとも、実用新案権の権利行使に際しては、「実用新案技術評価書」という、新規性の有無等について特許庁に調査してもらった結果を権利行使の相手方に予め提示する必要があります。
(3) このように見てくると、商品の寿命がごく短い場合には、実用新案権、そうでない場合には特許権ということが一応、言えそうです。また、ジュエリーのアイテムという物については実用新案権、方法については特許権を取得したり、実用新案登録出願を特許出願に変更したり、その逆も可能ですので、詳しくは出願を依頼する弁理士の先生に相談しましょう。
以上